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『1冊20分読まずに、「わかる!」すごい読書術の』の著者渡邊康弘が、最新のビジネス書をはじめ、読書会や読書法など、読書とイノベーションに関する様々な情報をお届けするブログです。

【コンサルの在り方を考える名著】書評:『謙虚なコンサルティング』エドガー・H・シャイン (著), 金井壽宏 (監修), 野津智子 (翻訳) 英治出版 (2017/5/17)

こんにちは、渡邊康弘です。

本日ご紹介する1冊は、
組織心理学の大家であります、
MITスローン経営大学名誉教授、
エドガー・シャイン博士の
最新作『謙虚なコンサルティング』です。

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日本でも
『人を助けるとはどういうことか』や
『問いかける技術』という本が
有名になりました。

本書は、まさにこの2冊をして掛け合わせた
コンサルティング手法が学べる一冊です。

来週の発売の一冊ですが、
今回英治出版さんにご献本いただきましたので、
さっそくご紹介させていただければと思います。

人を助ける際や相談に乗る際に、
どんなアプローチをしていますか?

これまでの社会では、
コンサルタントが
問題の解決策を常にもっていましたが、

社会が複雑化することによって、
もはやその答えを持ち合わせていない
そういうケースが目立ってきました。

問題の解決策を知っている人が誰もいない。
万能の解決策というものがない、という時代に、
どのような対応をコンサルタントがとっていけばいいのか?

どうやってクライアントと付き合っていくのか?

それをまとめた一冊になります。

クライアントとコンサルティングとの関係をですね。
三つの段階に分けています。

レベル1 取引上の、お役所的な、ほどほどの距離を保った関係
レベル2 個人的な関係(パーソナライズ)
レベル3 親密さ、愛着、友情、恋愛感情

この三段階の関係性を踏まえ、レベル2の関係性を築いていくことが
大切だとシャイン博士はいいます。
レベル3の関係性までいくとかえってビジネスがうまくいかないケースが多く、
レベル2までの関係性でいくことが望ましいとのこと。

コンサルタントは、力になりたいという「積極的な気持ち」と
この人、問題を知りたいと思う「好奇心」、個人的な話をする「思いやり」を
持って取り組んでいくこと。
このことが、レベル2の関係性へと結びつきます。

質問をする中で、概念(WHY)、感情(FEEL)、行動(ACTION)という
三つの視点を意識して、問いかけをしていくことが大切です。

こうした問いかけをしていくことによって、
建設的なレベル2の関係性が生まれ、
クライアントとコンサルタントは、アダプティブ・ムーヴを探せるようになる
といいます。

この「アダプティブ・ムーヴ」の説明が、この本でもなかなか難しいのですが、

問題を特定することができない=アダプティブ
どんな問題にも有効な万能な解決策などないことを思い起こさせる=ムーヴ

という意味合いでこの本では展開されています。

本書は、複雑な社会に向けて、
今後どのような関係性をクライアントと築いていくのか?
そのことがわかる名著です。

その場、その瞬間の解決策は、
クライアントと一緒に導き出していくこと。

ケース25のケースを見ながら、
新しいあり方を見出していきます。

 

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

 

 

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■本書の共鳴ポイント

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確実に支援するためには、本当の問題、
すなわちクライアントの懸念が何かを突き止め、
その一方で、「本当の問題」などなく、
一連の不安が至るところにあるだけだという事実を受け容れる必要がある。

クライアントの懸念を突きとめるためには、
クライアントと支援者が信頼し合い、
素直に話ができることが必要である。自分の懸念を打ち明けられるくらい、
クライアントは十分に安心できなければならないのだ。

支援の場では仕事の域を出ないレベル1の関係が珍しくないが、
互いを信頼して素直に話をするためには、
そのレベルを超えた、個人的な話のできるレベル2の関係を築く必要がある。

効果的なレベル2の関係を築くためには、初めて話をするまさにその瞬間から、
「力になりたいという積極的な気持ち」と「好奇心」と
「クライアントとその状況に対する思いやり」を態度で示すことによって、
関係を打ち解けたものにする(パーソナライズ)必要がある。

パーソナライゼーションは、個人的なことに踏み込んだ質問をしたり、
状況とそれについてのクライアントの気持ちとに共感に耳を傾けたり、
より個人的な考えや自然にわき起こる反応を伝えたりすること通して生まれる。

レベル2の関係を築けたと実感できたら、何が問題なのか、
支援が本当に必要なのはどこか、次にどんなことをすればよさそうかを、
支援者とクライアントは共同で進めるダイアローグのなかで探ることになる。

問題が単純明快だとわかったら、支援者はみずから専門家もしくは医者の役割を担うか、
あるいはクライアントを他の専門家に紹介するといい。

しかし、問題が複雑と厄介だとわかったら、クライアントと支援者は、
「これによって問題が解決されるわけではないかもしれないが、
次のアダプティブ・ムーヴへつながる新たな情報を得られる」
ことを理解したうえで、実行可能なアダプティブ・ムーヴを探すべきである

そうした決定は、共同で行う必要がある。
なぜなら、コンサルタントがなんらかの提案ができるほど十分にクライアントの
個人的な状況や組織文化についてしることは決してないし、
クライアントが、自分だけでなんらかの行動を決定できるほど十分に、
調査などの診断プロセスツールを使った
介入のあらゆる結果について知ることも決してないからである。

そのため、コンサルタントは責務の一つとして、
さまざまなアダプティブ・ムーヴの結果を理解し、
そうした結果のポイントをクライアントにしっかり伝えて、
クライアントがそのムーヴを行う準備ができているかどうか判断する必要がある。

 

決まったやり方やツールのことは忘れよう。
探究心を旺盛にし、好奇心を高められるかどうかを
確かめてみよう。

ダイアローグを行う目的は、問題の探究であって、
結論に至ることではないことを忘れないこと。

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『謙虚なコンサルティング―クライアントにとって「本当の支援」とは何か』
エドガー・H・シャイン (著), 金井壽宏 (監修), 野津智子 (翻訳)
http://amzn.to/2q1La00
単行本: 320ページ
出版社: 英治出版 (2017/5/17)

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謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

 

 

■今後のセミナー予定

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2017年5月21日(日) 東京
レゾナンスリーディング基礎講座
http://resonance20170521.peatix.com/view


2017年6月17日(土)、18日(日)
レゾナンスリーディング マスター講座 in 滋賀(第17期)
※基礎講座参加者のみ

2017年6月24日(土)、25日(日)
レゾナンスリーディング マスター講座 in 東京(第18期)
※基礎講座参加者のみ

 

英治出版の広報担当者とファシリテーターで読書会!

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