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『1冊20分読まずに、「わかる!」すごい読書術の』の著者渡邊康弘が、最新のビジネス書をはじめ、読書会や読書法など、読書とイノベーションに関する様々な情報をお届けするブログです。

【下流社会から格差固定へ : 書評 『格差固定』 三浦展著】

大ベストセラー下流社会から10年、「格差固定」が訪れている

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下流社会』から10年、調査からわかった一冊が発売された。

三浦展氏の『格差固定』だ。

三浦展氏といえば、これまで『富裕層の財布―誰も知らないお金の使い方 』や『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』など、数々のマーケッターに欠かせない本を輩出してきた。

 

格差固定 下流社会10年後調査から見える実態

格差固定 下流社会10年後調査から見える実態

 

 

本書は、三菱総合研究所の「生活者市場予測システム」を元に追加調査し、

下流社会から10年後現状の日本がどのような状況がわかる一冊となっている。

 

本書の重要な点を抜き出せば、

 

10年間で下流化が進み、下流が43%になったこと。

 

そして、

 

上位9%が59%の資産を保有し、

下位49%は4%しか保有しない。

 

さらに、

「大学貧乏」が増加したり、下流化が進み、

下流から上がることが難しいことがわかる。

 

後編では、政治、メディア、消費意識を

データを元に今後の動向が描かれているため、

これからの時代洞察をしたい人には興味深い一冊となっている。

 

私自身、この本を読んで驚いたのは

冒頭の「はじめに」だ。

 

冒頭の「はじめに」から度胆をぬかされる

昭和35年からわかる歴史の暗号

 

はじめに 下流43% 昭和35年並みになった日本

 

この一言で歴史の暗号とも呼ぶべきことを物語っている。

昭和35年、すなわち1960年だ。

 

1960年といえば、まず思い出されるのが「安保闘争」だ。

1957年に岸信介首相が安保改定に乗り出し、米側と話し合いがもたれた。

その後、新安保が現実味が帯びた段階で反対デモが活発化し、

60年5月19日には新安保条約が強行採決された。

 

現代の状況と非常に近い。

安倍首相の安保法案に関して参院でどうなるかが注目を集めているが、

何も私はここで、今の政治がどうこう話をしたいわけではない。

 

大抵の場合、現在の政治史や世界の政治抗争が理解しない上で

議論されるため、そこにメリットを感じないからだ。

 

もっとも、相手の状況をしっかりリサーチしないことや

理解をしない上で、何かを批判することは全く持って意味がない。

 

ここで伝えたいのは、

歴史には暗号や符号があり、サイクルがあるということ。

 

私は高校生の時に、政治家になりたくて自民党史を調べ上げた。

もっとも、当時は本が読めなかったから愛読していたのは、マンガ『大宰相』だ。

 

歴史劇画 大宰相(3) (講談社+α文庫)

歴史劇画 大宰相(3) (講談社+α文庫)

 

 

このマンガ『大宰相』全10巻は戸川 猪佐武先生の『小説 吉田学校』を原作とし

さいとうたかを先生が作画した優れたマンガ・シリーズである。

このマンガ10巻を読むことで日本の現代史がわかりやすく学べる。

しかも、絵になることで『小説 吉田学校 』の世界が生々しく感じ取れる。

 

 

小説吉田学校〈第1部〉保守本流 (人物文庫)

小説吉田学校〈第1部〉保守本流 (人物文庫)

 

 

 

 

この本を通じて、日本の現代史、自民党史を勉強し

大学に入った後は、これに係る文献を調べ、日本の歴史サイクル。

神田昌典氏の「70年サイクル理論」を調べていた。

 

70年サイクル理論は、ファンドマネジャーの大竹慎一氏の理論を元に、

アメリカの世代理論の研究者、ストラウス&ハウの『Generations: The History of America's Future, 1584 to 2069』、神田氏が考案したものだ。

 

Generations: The History of America's Future, 1584 to 2069

Generations: The History of America's Future, 1584 to 2069

 

 

簡単に説明すると、時代の境い目の周期が日本の場合

70年感覚で訪れるというものだ。

 

今から70年前は

1945年 終戦を迎え、

その70年前は

1875年 倒幕が起こり、明治政府が安定期に入る

そして210年前

1665年  天下が統一され、江戸幕府が質を取る制度(大名証人制)を 廃止し、

武断政治から文治政治へと切り替わった年だ。

 

確かに、こうした流れの中で1945年に起こったことと

似たような流れは起こっている。

 

1945年には、シリアやレバノンといった国々から

宣戦布告をされており、

同じようにISISから宣戦布告を受けている。

 

1945年1月には三河地震が起こっており、

この4月5月には、関東大震災が起こっている。

 

しかし、私の考えでは、

70年サイクル理論から、一時的に現在脱却され、

16.7年のサイクルを見た方が良いように感じている。

 

今を見るにはやはり1945年と、16.7年遡る

1960年前後をみることが大切だ。

 

いまは、昭和35年にワープしてしまったのかと思っている。

 

その理由は、2020年東京オリンピックにある。 

実は1964年の東京オリンピックも、決まった時点の首相は

安倍総理の祖父にあたる「岸首相」であった。

 

1960年の際に、安保闘争を受け、辞任。

その後、池田首相の「所得倍増計画」で日本が経済成長を高め、

東京オリンピック閉会式の翌日の10月25日に退陣する。

そして、佐藤首相へと変わっていく。

 

そうした歴史の流れがあるのではないかと

この本は、データを元に感じさせてくれる。

 

目次

第1章 階層格差の実態ー持てる者は富み、富める者同士が結びつく

第2章 格差固定の実態ー落ちるのは簡単だが、上がるのは難しい

第3章 職業別分析ー公務員が上流という新封建社会

第4章 政治と政策ー自民党に投票したのは夫婦のみ世帯という不快な結果

第5章 メディアーインターネットが政治を「保守化」させた

第6章 消費意識ー下流は精一杯 上流は欲しいものがない

第7章 コミュニティとコミュニケーションー若い世代はソーシャル系と文化的オムニボア、シニアはUBRCに注目

第8章 将来展望ー行きたい時代はバブル時代。学生、非正規雇用、無職は江戸時代も多い

 

興味深い一冊だ!!