こんな本を待っていた!!書評:『本を読むときに何が起きているのか』 ピーター・メンデルサンド (著)
『本を読むときに何が起きているのか』
ピーター・メンデルサンド (著), 山本貴光 (その他), 細谷由依子 (翻訳)
フィルムアート社 (2015/6/27)
私たちはいったい、
本を読むときに、何を見て、
どう思い描いているのだろうか?
本書は、読書における想像力の謎を、
ブックデザインの名手が解き明かす、
世にも不思議な言語とビジュアルの謎解きの一冊だ。
いままで、読書に関する本は、
テクニック論が多かった。
しかも、日本においては誰かが述べた読書術や読書法を
焼き直し、オリジナリティが欠けるものがほとんどだ。
本書はそうした、読書に関する本に飽き飽きした読者に
読書の新しい見方や、本質を教えてくれる。
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<目次>
「描くこと」を思い描く
フィクション
冒頭
時間
鮮やかさ
演奏
素描する
技
共同創作
地図と規則
抽象
目、錯覚、媒体
記憶と幻想
共感覚
意味しているもの
信念
模型
部分と全体
ぼやけて見える
【チェック・ポイント】
・「読書」と呼ばれる物語がある。
・読書の物語は、記憶された物語だ。私たちは読書するとき、没頭する。没頭すればするほど、経験に対して分析的な思考を向けることが難しくなる。だから、読書の感想を語る時、私たちは「読んだ」記憶について話しているにすぎない。
そしてこの読書の記憶は正確でない。
・私たちは本を読むとき、一度に(一飲みに】
1.ひとつの文章を読み、
2.その先にあるいくつかの文章を読み、
3.すでに読んだ文章の内容を意識上に残しながら
4.その先に起こることを想像する。
・読むということは、いくつもの、経験済みの「現在」の連続ではない。
・私たちは本を読むときに、自分にはすべてが見えていると信じることが大切だ。
・読書における創造はゆるやかにつながっているが、ランダムではない。
・読書の際に経験することの多くが、ある感覚が別の感覚と重なったり置き換えられた、共感覚的な出来事である。
・物語を思い描くことは、絵の中で人物が影にされてしまうように、要約することである。
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本書は本自体がファンタジーかあるいはミステリーなのか。
ページを開けた瞬間、その世界に引き込まれ、
そして、新たな気づきへといざなってくれる。
すばらしい一冊だ。
文責:渡邊康弘
本を読むときに何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間
- 作者: ピーター・メンデルサンド,山本貴光,細谷由依子
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2015/06/27
- メディア: 単行本
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